日本の刑事裁判で「執行猶予」という言葉を聞くと、多くの人は
「罪はあるけれど、刑務所には入らずに済む」というイメージを持つでしょう。
実際、日本では懲役3年以下であれば執行猶予が付く可能性があります。では、お隣の韓国ではどうなのでしょうか。
実は、条文上は似ていても、その“意味”や“運用思想”は大きく異なります。
日本と韓国、制度上はよく似ている
まず制度の表面だけを見ると、日本と韓国はよく似ています。
どちらの国でも、「懲役(または禁錮)3年以下」であれば、裁判所は執行猶予を付けることができます。
このため、一見すると「同じ基準」で運用されているように見えます。しかし、実際の運用を見ていくと、その内実はかなり異なります。
日本の執行猶予――「更生」を前提とした制度
日本における執行猶予は、基本的に「更生」を重視した制度です。裁判所が見ているのは、単に犯罪の重さだけではありません。
・反省しているか
・被害回復がなされているか
・再犯の可能性は低いか
・社会の中で立ち直れる環境があるか
こうした点を総合的に判断し、「刑務所に入れなくても社会の中で更生できる」と判断されれば、執行猶予が付きます。
そのため、日本では初犯であれば、比較的重い罪でも執行猶予が付くことがあります。
日本社会全体に、「処罰よりも社会復帰を優先する」という価値観が根づいているとも言えるでしょう。
韓国の執行猶予――より強い「制裁」の意識
一方、韓国では同じ「懲役3年以下」であっても、運用の考え方が異なります。
韓国では、犯罪に対する社会的非難や秩序維持の意識が強く、「法を破った以上、明確な制裁を受けるべきだ」という考えがより前面に出ます。
そのため、
・前科がある
・同種犯罪である
・社会的影響が大きい
といった場合、3年以下であっても実刑になるケースが少なくありません。
特に再犯については非常に厳しく、日本であれば執行猶予が付くような事案でも、韓国では実刑となることがあります。
「3年」という数字が意味するものの違い
興味深いのは、日本も韓国も「3年」という同じ数字を基準にしている点です。しかしその意味はまったく異なります。
日本では「3年以下=社会内での更生が期待できる範囲」
韓国では、「3年以下でも必要なら実刑を科す範囲」
と理解されているのです。
つまり、日本の3年は“猶予の可能性を広げる線”であり、韓国の3年は“処罰の上限を区切る線”に近いと言えるでしょう。
まとめ―どちらが正しいのかという問題ではない
この違いは、優劣の問題ではありません。それぞれの社会が、犯罪とどう向き合うかという価値観の違いを反映しています。
日本は、恥や反省、社会的つながりを通じた更生を重視します。韓国は、法秩序の明確さと社会的抑止力を重視します。
どちらも、その社会の歴史や文化、国民感情の中で形成されてきたものです。
ですから、「懲役3年以下」という同じ言葉でも、その背後にある思想は国によって大きく異なります。
日本では「やり直す機会を与える線」、
韓国では「責任を明確にする線」。
この違いを知ることで、ニュースで報じられる判決や、「なぜあの人は実刑で、こちらは執行猶予なのか」という疑問も、少し違った角度から見えてくるはずです。
法制度は社会の価値観を映す鏡でもあるのです。
