第6回 体に入ったら出ない?—PFASの蓄積性と“デトックス”の限界

健康問題
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前回、PFASががんや不妊、免疫障害などと深く関係しているかもしれないという話をお伝えしました。

では、すでに体に入ってしまったPFASは、どうしたら外に出せるのでしょうか?

「たくさん汗をかけばいい?」
「水を飲んで排出できる?」
「サプリや健康法で“デトックス”できるのでは?」

……実は、これが思ったほど簡単ではないのです。

 

PFASの“厄介さ”はその蓄積性にある

PFASは一度体に入ると、血液や肝臓、腎臓、脂肪組織などに結びついて、長期間体内にとどまります。

とくに問題視されているPFOSやPFOAは、それぞれこんな半減期があるとされています:

PFOS:およそ5年
PFOA:およそ3〜4年

これはどういうことかというと、いま体に取り込んだPFASの“半分”が消えるのに数年かかるということです。

つまり、体内のPFAS濃度は、ちょっとやそっとの生活改善では下がらないという現実があります。

 

よくある「デトックス神話」にご注意

巷では、次のような方法で「デトックスできる」と語られることがあります:

汗をかけば出る(サウナ・運動)
水をたくさん飲む
食物繊維をとる
サプリメント(ビタミンC、活性炭など)
断食・ファスティング

確かに、これらは体の代謝機能を高める意味では有効ですが、PFASのような“水にも油にもなじみにくい安定化学物質”には、ほとんど効かないのが実情です。

 

科学的に見たPFASの排出経路

現時点の研究では、PFASはごくわずかずつ、いくつかの経路で体外に排出されていることが確認されています。

まず、尿からの排出がありますが、これはPFASの中でも分子の短い「短鎖型」と呼ばれる一部の物質に限られており、特に問題視されている長鎖型(PFOSやPFOA)については、ほとんど排出されません。

次に、母乳を通じて排出されるケースがあります。これはつまり、妊娠中の女性が持つPFASが、赤ちゃんに受け渡されてしまうということです。

母乳を通して排出できるという意味では一見メリットのように見えますが、それは同時に“次世代への暴露”を意味します。

また、汗に含まれるという報告もあります。高温環境や運動で出る汗の中に、ごく微量ながらPFASが検出されることがあり、サウナやホットヨガが“多少の排出には役立つ可能性がある”という見解もあります。

ただし、その量は非常に微量で、生活習慣を変えたからといって、短期間で体内濃度が下がるという期待はできません。

さらに、髪や爪からの排出も一部報告されていますが、これも排出量は極めて少なく、健康リスクを下げるほどの効果は見込めないとされています。

つまり、PFASは「取り込んだら出しにくい」物質であり、デトックスを過信するのは危険だということです。

 

私たちはもう諦めるしかないのか?

いいえ。排出できないからこそ、“新たに取り込まない”生活が重要になるのです。

PFASは1回で健康被害を起こすわけではなく、体内濃度が一定のラインを超えたときに、さまざまな症状として現れるとされています。

だからこそ、“これ以上入れない”ことが長期的な健康を守るカギになります。

 

今日からできる「PFASを入れない」生活習慣

まずは、飲み水を見直すことが基本です。活性炭フィルターに加えて、RO膜(逆浸透膜)を備えた浄水器はPFAS除去に非常に効果が高いとされています。

ウォシュレットや加湿器の水も同じく浄水を使うことでリスクを下げられます。

次に、食材の選び方も重要です。PFASは底魚や大型魚に蓄積しやすく、また内臓や血合いに多く含まれる傾向があります。頻繁に摂取するのは控えましょう。

また、工場周辺や地下水利用の農地で育った野菜や米も慎重に選ぶ必要があります。

台所やバスルームの見直しも有効です。フッ素加工のフライパンや鍋は、コーティングが傷つくとPFASが溶け出す恐れがあるため、使用を見直した方が安全です。

撥水スプレー、フッ素系の歯磨き粉や化粧品も見直し対象になります。

最後に、情報収集を習慣にすること。自治体の水質検査結果や、企業の製品仕様の公開データなどを積極的にチェックする習慣を持つことで、PFASを“知らずに取り込む”リスクを減らせます。

 

日本企業の責任は?

PFAS製品を長年製造してきた日本企業として、ダイキン工業、AGC(旧・旭硝子)、そして三井・デュポンフロロケミカルなどがあげられます。

これらの企業は、アメリカのデュポンや3Mと提携しながら、国内外でPFAS製品を流通させてきました。

現在は「新PFAS(短鎖型)」や「代替品」に移行しているとしていますが、その安全性については明確な証拠が示されていないケースもあります。

情報公開や製品への表示が進まない限り、消費者が自らの健康を守るには、自分で調べ、選び、避けるしかないというのが実情です。

 

結論:「出す」より「入れない」ことが最大の防御

PFASは、“体の外に出す”のが難しい化学物質。けれど、それを知ることで、“どう生活を見直すか” “何を選ぶか”の判断ができるようになります。

完璧に避けることはできなくても、暴露の機会を少しずつ減らしていくことが、体の蓄積量を減らす一番の近道です。

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