第12回 PFASの代替品は本当に安全か?—“ノンフッ素”商品の落とし穴

健康問題
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PFAS(有機フッ素化合物)の有害性が少しずつ社会に知られるようになり、「ノンフッ素」や「PFASフリー」をうたう製品も増えてきました。

「やっと安全な商品が出てきた」
「フッ素さえ使っていなければ大丈夫」

そんな安心感が広がる一方で、私たちはもう一つのリスクを見落としているかもしれません。

それは、“代替PFAS”や“別名のフッ素化合物”が使われている可能性です。

今回は、”フリー表示”の裏側にある落とし穴についてお話しします。

 

ノンフッ素とは“PFOSやPFOAを使っていない”という意味?

PFASには何千種類もの化合物があり、その中で特に規制が強まっているのは、以下の2種類です。

PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
PFOA(ペルフルオロオクタン酸)

これらは長鎖型(C8)と呼ばれ、体内に長く残留することで知られています。

日本でもこの2つは“優先的に規制すべき物質”として扱われており、企業も「PFOS・PFOAフリー」や「ノンC8」といった表示を行うようになってきました。

しかし、これは“PFAS全体を使っていない”ことを意味しているわけではないのです。

 

“ノンC8”の代わりに使われている新たなPFAS

PFOSやPFOAに代わる物質として、現在広く使われているのが「短鎖型PFAS」や「フッ素化ポリマー」「フッ素界面活性剤」です。

代表的なものには以下のような物質があります:

GenX(ヘキサフルオロプロピレンオキシド誘導体)
ADONA(アミド系フッ素化合物)
PFHxA(ペルフルオロヘキサン酸)
PFBS(ペルフルオロブタンスルホン酸)

これらは「C6」や「C4」といった短い炭素鎖を持ち、従来のPFASより残留性が低いとされているため、“代替PFAS”として使われています。

しかし――

欧州化学機関(ECHA)やアメリカの環境保護庁(EPA)は、これらの新しいPFASにも同様の毒性や蓄積性の懸念があると指摘しています。

また、一部の代替PFASは、従来のものよりも水中に拡散しやすく、除去が困難という報告もあるのです。

 

フリー表示の曖昧さ—誰が何を保証しているのか?

「PFASフリー」「ノンフッ素」「有害物質不使用」といった表示は、消費者に安心感を与えます。

しかし、その表示に法的な定義や統一基準があるわけではありません。

つまり:

PFOSやPFOAを使っていなければ「PFASフリー」と表示できる
代替PFASの使用について記載義務はない
表示そのものが企業の“自主判断”に任されている

この現状では、消費者は実質的に“信じるしかない”状況に置かれているのです。

 

安全のために私たちにできること

それでは、どのようにすれば“本当に安全な選択”ができるのでしょうか?

完全な見分け方は難しくとも、以下の点を意識することが重要です。

✅ フッ素化合物全体を避ける視点をもつ

単に「PFOS・PFOAフリー」かどうかではなく、全てのフッ素系成分の使用有無に着目する必要があります。

製品成分に「fluoro」や「PTFE」「GenX」などの表記があるか確認しましょう。

✅ 企業の対応姿勢を確認する

透明性の高い企業は、公式サイトでPFAS全般の使用有無を明記しています。

環境団体の調査で“グリーンブランド”として評価されているかも目安になります。

✅ 検査済み・第三者認証をチェックする

一部の環境NGOや欧州の認証機関では、「PFAS完全不使用」を証明するラベル制度を導入しています。

日本ではまだ普及していませんが、今後注目される分野です。

 

企業に“代替品”の透明性を求める時代へ

PFASをやめたと言いつつ、その代わりに別のPFASを使う。
これでは問題のすり替えにすぎません。

いま必要なのは、「代替品だから安全」という発想そのものを見直すことです。

そして、企業には単なる“使用の有無”だけでなく、「なぜそれを使い、どんな影響があるのか」を説明する責任があるはずです。

私たち消費者もまた、「より高い安全性を求める目」をもつことが、企業の姿勢を変える力になります。

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