ある日ふと、蛇口をひねって出てくる水を見て、こんな不安を感じたことはありませんか?
「この水、本当に安全なのかな…?」
見た目はきれいで、においも味も特におかしくない。
でも、見えない有害物質「PFAS(有機フッ素化合物)」が混じっている可能性があることを、私たちはどれだけ知っているでしょうか?
今回は、私たちの生活に欠かせない“水道水”が、どのようにPFASに汚染されているのか、そしてその背景にある企業や制度の問題についてご紹介します。
「日本の水は世界一安全」…本当にそう?
「日本の水道水はそのまま飲める、世界でも珍しい国」
これは確かに事実です。けれど、“味や衛生面が問題ない”ことと“有害化学物質が含まれていない”ことは別問題です。
実際、ここ数年で全国各地の水源や水道水からPFASが検出され、住民の不安が高まっています。
実際に汚染が確認された地域(一例)
東京都多摩地域(2020年)
井戸水や地下水から高濃度のPFOS・PFOAが検出。調査が遅れたことで一時騒動に。
沖縄県宜野湾市・うるま市(米軍基地周辺)
基地の消火訓練で使用された泡消火剤が原因とされる。近隣の川や水源からPFASが検出。
大阪府摂津市・高槻市(淀川流域)
ダイキン工業の淀川製作所の周辺から高濃度のPFOAが検出されたことが報じられた。
神奈川県座間市・相模原市
米軍相模総合補給廠周辺の井戸水で基準値超えのPFOS。
驚くべきは、これらの多くが「飲用可能」とされた水から検出されているということです。
つまり、私たちが毎日、料理に使い、飲み、肌に浴びているその水の中に、PFASが潜んでいるかもしれないのです。
なぜPFASが水に混入するのか?
PFASは水に溶けやすく、一度排出されると地下水や河川を通じて長距離を移動します。
そしていったん水源に入ると、従来の浄水処理(塩素消毒や沈殿ろ過)では取り除くことができません。
汚染源となる主な経路は以下のとおりです:
工場からの排水(撥水剤、フッ素加工製品などの製造)
米軍基地や空港で使われたPFAS系消火剤
ゴミ焼却場や下水処理場からの流出
とくに日本国内では、ダイキン工業、AGC(旧・旭硝子)などの大手企業がフッ素化学品の製造を長年行っており、工場周辺で汚染が報告されています。
でも、国の基準は「暫定」レベル?
日本政府は2020年に、PFOS・PFOAの水質について合計で50ナノグラム/リットル(50ng/L)以下が望ましいという「暫定目標値」を設定しました。
しかしこれは、あくまで「参考にすべき目安」にすぎず、法的な強制力はありません。
しかも――
アメリカでは2024年に、PFOAの飲料水基準を4ナノグラムではなく、4ピコグラム(=0.004ng/L)にまで引き下げています。
つまり、日本の基準はアメリカの約1万倍もゆるいということ。
「日本の水は安全」なんて、安心していられる状態ではないのです。
あなたの住む地域は大丈夫?
現在、全国の自治体で水道水のPFAS検査をしているのはごく一部にすぎません。
調査が行われていない地域では、汚染の有無すら把握されていないのが現状です。
「うちは大都市だから大丈夫」
「田舎だから自然が豊かで安心」
そう思っていても、見えない毒はどこまでも広がっている可能性があります。
いま、私たちにできること
まずは知ること
自分の住む自治体が水質調査をしているかどうか、HPや議会資料で確認してみましょう。
必要ならば声を上げること
住民として、調査や対策を求める意見書を出すことは可能です。
家庭内での対策を講じること
活性炭フィルターやRO浄水器の導入など、できる範囲から始めましょう。ウォシュレットに使う水にも注意を。