「農協悪玉論」は誰が広めたのか?—メディアと官僚の作った虚像

時事問題
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農協が悪い、農協が古い、農協が日本の農業をダメにしている——。

こうした「農協悪玉論」は、いつしか当たり前のように語られるようになりました。

しかし、ここで疑問が湧きます。

なぜ、こうした“農協=悪”のイメージが、これほど広く共有されるようになったのでしょうか?

今回は、その背景にある「情報の流れ」と「権力構造」に目を向けてみたいと思います。

 

なぜ農協ばかりが槍玉に挙げられるのか?

農業が抱える課題は、農協の問題に限らず、高齢化・後継者不足・流通構造の複雑さ・気候変動など、複合的で深刻な要因が重なっています。

にもかかわらず、なぜか政策論や報道では、「農協が悪い」「農協が既得権益を守っている」といった論調ばかりが取り上げられがちです。

これはまさに、“スケープゴート(責任転嫁の対象)”として農協が選ばれたことを意味しています。

 

財務省・経産省・改革官僚のシナリオ

「構造改革」のスローガンのもと、農協を批判してきたのは政治家や財界人だけではありません。

その裏には、財務省や経済産業省といった官僚機構の意図もあると指摘されています。

農業予算の削減や、民間企業の農業参入促進を狙う動きの中で、農協という“岩盤組織”は、改革の障害物として扱われてきました。

特に財務省は、農協系統が支える“政治力の強い農村票”を牽制する立場にあり、政策誘導の一環として、農協解体論を促進してきたという見方もあります。

 

メディアが流布した「農協=悪」の物語

こうした政治的・官僚的な思惑に呼応する形で、テレビや新聞、経済誌などの大手メディアは、「農協は時代遅れのムダ組織」といったイメージを繰り返し流しました。

例えば以下のような演出が行われました。

補助金頼みの農家の姿を強調する映像
農協の役職員が高給取りであるかのような報道
農業を活性化する“新規参入ベンチャー”との対比

しかし、これらは農協全体の姿ではなく、切り取られた一部の事例にすぎません。それがあたかも農協全体の問題であるかのように報じられ、国民の印象に刷り込まれていったのです。

 

「抵抗勢力」というレッテル貼り

小泉政権以降、農協は「改革を邪魔する古い勢力=抵抗勢力」としてしばしば批判されてきました。

このレッテル貼りは、改革を推進する側が自身の正当性を主張するための便利な道具でした。

しかし実際には、農協が反対してきたのは「農家を切り捨てる改革」であり、農協自身の利益ではなく、地域農業と農民の生活を守る立場からの抵抗だったのです。

 

結論:虚像を見破るために必要なのは「現場の声」

農協がすべて正しいわけではありません。組織の改善が求められる部分も確かにあります。

しかし、「悪玉論」によって農協の存在そのものを否定するような風潮は、意図的に作られた虚像にすぎません。

実態を知るには、現場の農家の声に耳を傾けることが必要です。

そして、その声の多くは、「農協がなければ困る」「農協がいてくれて助かっている」という現実を語っています。

メディアの報道や一部の評論家の意見だけで判断するのではなく、農協の本当の役割を冷静に見直す視点が、今こそ求められています。

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