「農協は農業団体だから、農家にしか関係がない」
そう思っている方も多いかもしれません。けれども、現実はまったく逆です。
農協は今、過疎地の“最後のインフラ”として、農家だけでなく地域住民全体の暮らしを支えているのです。
この記事では、農協が担っている多面的な役割を紹介しながら、「なぜ農協が“命綱”と呼ばれるのか」その理由を掘り下げていきます。
JAは「農業団体」ではなく「地域生活協同組合」
たしかに、農協(JA)は農業協同組合として設立されました。けれども、現在のJAは、農業に関わっていない住民にも不可欠な生活インフラを提供しています。
JAバンク、JA共済、葬祭、購買、病院、保育、介護、生活相談…。
これらは、単なる営利事業ではなく、地域の“暮らし”そのものを支えるために展開されてきたものです。
金融機関が撤退する中で残ったJAバンク
地方銀行や郵便局が支店を統廃合し、ATMすらなくなる地域が増えています。
そんな中で、JAバンクだけが唯一の金融機関として残っている自治体も珍しくありません。
農協にとっては利益にならなくても、住民の「年金の受け取り」「生活費の管理」「納税の支払い」といった日常の金融活動を支えるために、採算度外視で店舗や窓口を維持しているのです。
JA葬祭や移動販売は「生活支援サービス」
JAグループが提供するサービスは多岐にわたりますが、中でも注目されているのがJA葬祭や移動購買(移動スーパー)です。
葬祭:地域密着で、地元の風習に配慮した良心的な価格とサポート体制
移動販売:交通弱者となった高齢者に向けて、生鮮品や日用品を届けるライフライン
これらは、民間企業が撤退した後を埋める「公共的な活動」として、地域からの信頼を集めています。
人と人をつなぐ「地域の居場所」としての農協
JAの直売所や支店は、単なる施設ではなく、地域の人々が出会い、会話し、情報交換をする“交流の場”でもあります。
コロナ禍を経て孤立が深まる中、JAの職員や生活相談員の存在が、高齢者の見守りやメンタルサポートの役割も果たしてきました。
地域住民にとってJAは、「窓口」ではなく、「顔の見える相手」であり、“暮らしの隣人”なのです。
結論:「農協をなくす」ことは「地域を切り捨てる」こと
もし農協がなくなれば、農業だけでなく、金融、葬祭、介護、生活全般にわたるインフラが一挙に崩壊する地域が日本中に出てくるでしょう。
これは農協が非効率だからといって簡単に切り捨ててよい話ではありません。
むしろ「市場原理では維持できないサービスを、地域のために守っている」ことこそ、農協の本質的な価値なのです。
農業団体という狭いイメージではなく、「地域の命綱」としての農協の真の姿を、多くの人に知ってもらいたい。
それが、私たちの未来の地域社会を守るための第一歩です。