第5回:本当に“私たち”が払っているの?—消費税の「課税対象」と「負担者」のズレ

時事問題
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「レジで払ってるから、自分が払ってる」…それ、本当ですか?

スーパーでパンを買う。レジで1,080円払う(本体価格1,000円+消費税80円)。

このとき、多くの人はこう思っています。

「消費税を“自分が”払っている」

たしかに財布からお金を出しているのは私たちです。でも実は、法律上の課税対象は私たちではありません。

 

消費税は「企業に課税される税金」

消費税は、私たち消費者に直接課せられる税金ではなく、モノやサービスを提供した事業者(企業)に対して課せられる税金です。

これを税法上、「間接税」と呼びます。

 

つまり、

レジで集めたお金(税分)は「一時的に預かっている」だけ

それを企業がまとめて国に納税する

という流れになっています。この意味では、消費税の「納税義務者」は企業なのです。

ではなぜ「自分が払ってる」と感じるのか?それは、最終的に負担しているのが消費者だからです。

 

たとえば、

おにぎり:100円 → 消費税10円 → 合計110円

この110円を払うのは私たち

でも、10円を「税金として国に納める」のはコンビニ運営企業

 

つまり、

負担者(経済的に支払う人):消費者

納税者(法律上の義務を負う人):企業

このズレが、消費税の最大の特徴であり、“誰が払っているのか”が見えにくい原因なのです。

 

赤字でも消費税は払わなければならない

ここでもう一つ重要なポイントがあります。

所得税や法人税は「儲かったときにだけ課税」されますが、消費税は赤字でも問答無用で支払わなければならないのです。

たとえば、年間売上が1,000万円(うち消費税100万円を預かる)だとして、経費が多くて最終的に赤字だったとしても、100万円の消費税は国に納めなければなりません。

つまり、企業にとっては「預かった税金だから」という理屈でも、資金繰りが厳しい中で重くのしかかる税金なのです。

 

なぜこの構造が問題なのか?

消費者は「自分が納税している」と思い込んでいる
→ そのため「税の使われ方」に無関心になりやすい
→ 政府にとって“文句が出にくい便利な税”になる

企業は赤字でも納税義務がある
→ 中小企業にとっては資金的に大きな負担
→ 売上はあるのに手元にキャッシュがない場合も

このように、消費税は“誰も声を上げにくい税金”になってしまっているのです。

 

「税金の本質」を取り戻すには

私たちはレジで税金を払うとき、「ああ、これで国を支えているんだ」と思うかもしれません。

でも、そのお金がどう使われているか、本当に公平に集められているのか、見えにくくなっているのが今の制度です。

「課税されているのは誰か?」
「実際に苦しんでいるのは誰か?」
「誰が得をしているのか?」

こうした疑問を持つことこそが、税の正しいあり方を考える出発点になります。

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