最近、「2026年4月から年金が増える」という話を聞いた方も多いのではないでしょうか。
ニュースやインターネットでも話題になっていますが、実際にはどのくらい増えるのか、また制度はどのように変わるのか、少し分かりにくい部分があります。
そこで今回は、2026年度の年金改定について、一般の方にも分かりやすく整理してみます。
1 2026年4月から年金が少し増える
まず、2026年4月から公的年金の支給額が引き上げられます。
今回の改定では、老齢基礎年金(いわゆる国民年金)の満額が少し増えます。これまでの満額は月額69,308円でしたが、2026年度からは70,608円になります。
つまり、月額で1,300円の増額です。割合でいうと、およそ1.9%の引き上げになります。
厚生年金も同時に改定されます。ただし厚生年金は、現役時代の給与や加入期間によって金額が変わるため、一律ではありません。平均的なモデルケースでは、月額でおよそ2,000円前後の増額とされています。
このため、基礎年金と厚生年金を合わせると、多くの人の場合、月額でおよそ3,000円前後の増額になると考えられます。ただしこれはあくまで平均的な目安であり、個人によって差があります。
なお、この金額改定は2026年4月から適用されますが、年金は2か月分まとめて支払われる仕組みのため、実際の振込額に反映されるのは2026年6月の支給分(4月・5月分)からになります。
2 ただし「大幅増」というわけではない
今回の年金改定は、物価や賃金の変動を基準に計算されています。そのため、数字としては増えていても、物価の上昇の方が大きい場合には、実質的な生活のゆとりが増えるとは限りません。
実際、専門家の間では「名目では増額だが、実質的には目減りしている可能性がある」という指摘もあります。したがって、今回の改定は「大幅な年金増額」というよりも、物価に合わせた調整と考えた方がよいでしょう。
3 もう一つの重要な変更「65万円の壁」
今回の年金制度の変更でもう一つ注目されているのが、「65万円の壁」と呼ばれる制度改正です。これは在職老齢年金制度の見直しです。
在職老齢年金とは、年金を受け取りながら働いている人の年金額を調整する仕組みです。簡単に言うと、「給与と年金の合計額」が一定の金額を超えると、厚生年金の一部が減額される制度です。
これまでは、この基準額が月51万円でした。つまり、給与と厚生年金を合わせて51万円を超えると、その超えた分の半分が年金から減らされていました。
そのため、「働きすぎると年金が減る」という現象が起こり、多くの人が働く時間を調整する「働き控え」をする原因にもなっていました。
しかし、2026年4月からこの基準額が大きく引き上げられます。新しい基準は月65万円です。つまり、給与と年金の合計が65万円までは、年金が減額されず満額支給されることになります。
4 制度変更で何が変わるのか
具体例で考えてみましょう。
例えば、月給46万円で厚生年金が10万円の人の場合、合計は56万円になります。
これまでは51万円を超えていたため、年金が一部減額されていました。しかし新制度では65万円以下になるため、年金は満額支給されることになります。このようなケースでは、年間で数十万円ほど受取額が増える可能性もあります。
この制度変更の背景には、日本の深刻な労働力不足があります。高齢化が進む日本では、働く人の数が減り続けています。そのため政府は、高齢者が働き続けやすい制度を整えようとしているのです。
つまり今回の制度改正は、「年金を増やす」というよりも、「働いても年金が減りにくくする」という政策の意味合いが強いと言えるでしょう。
5 想定される質問とその答え
Q1 本当に年金は3000円くらい増えるのですか?
平均的なケースでは、基礎年金の増額(約1,300円)と厚生年金の増額(約2,000円前後)を合わせて、月額でおよそ3,000円程度の増額になるとされています。ただし、厚生年金の金額は人によって大きく異なるため、実際の増額は個人差があります。
Q2 この増額はいつから受け取れるのですか?
年金額の改定は2026年4月から適用されます。しかし年金は2か月分まとめて支払われるため、実際の振込額に反映されるのは2026年6月支給分(4月・5月分)からになります。
Q3 働いていると年金が減る制度はなくなるのですか?
完全になくなるわけではありません。2026年4月から減額の基準が51万円から65万円に引き上げられるだけです。そのため、給与と年金の合計が65万円を超える場合には、これまでと同じように厚生年金の一部が減額される可能性があります。
Q4 基礎年金も減らされることはありますか?
ありません。在職老齢年金で減額の対象になるのは厚生年金だけです。基礎年金(国民年金部分)は減額されません。
Q5 なぜ政府はこの制度を変えたのですか?
背景には日本の人口構造の変化があります。高齢化が進み、働く世代の人口が減少しているため、政府は高齢者にも働き続けてもらう必要があります。そのため、「働くと年金が減る」という制度を緩和し、働きやすい環境を整えることが目的とされています。
まとめ
2026年度の年金制度の主な変更点は次の二つです。
第一に、老齢基礎年金が月1,300円程度増額され、厚生年金も平均で2,000円前後増えるため、全体として月3,000円程度の増額になる可能性があります。
第二に、在職老齢年金の基準が51万円から65万円へ引き上げられ、働きながら年金を受け取る人の減額が起きにくくなります。
このように、2026年度の年金改定は金額の増額だけでなく、「働きながら年金を受け取る仕組み」を変える点でも重要な制度変更と言えるでしょう。
