「税制は国会で決まる」…それは表の話にすぎない
私たちは、「税金の仕組みは、国民の代表である国会議員が決めている」と思いがちです。
たしかに最終的な法律は国会で可決されます。しかし、その前に“設計図”を描いているのは誰か?
その答えは、たいてい次の2つの組織です。
財務省(国家財政を担う官僚組織)
経団連(大企業の利益を代弁する経済団体)
この2つが水面下で協調しながら、“望ましい税制”を練り上げている。今回は、その構造と実態に迫ります。
経団連とは何か?
正式名称は「日本経済団体連合会」。
大手企業・金融機関・業界団体が多数加盟する、いわば日本経済の“代表組織”です。
加盟企業:約1,500社(トヨタ、三菱、NTT、JR、各メガバンクなど)
発言力:政界・官界・メディアに強い影響力を持つ
役割:企業の意見をまとめ、税制・労働・環境・貿易政策などを提言
特に「税制改正要望」に関しては毎年、詳細な提案書を政府に提出しています。
財務省との“政策協議”という名のロビー活動
表向きには、「民間からの建設的な意見提供」。しかし実態は、極めて高度に政治的な交渉の場です。
経団連は「法人税を下げてほしい」「設備投資減税を拡充してほしい」などの要望を出す
財務省はそれを受け、“落としどころ”を探る形で税制案を設計する
こうして、税制改正大綱が組み上がる
この過程で、一般国民の生活や中小企業の声は入りにくいのが現実です。
経団連の“法人税引き下げ要求”は毎年恒例
経団連の公式サイトには、毎年「税制改正に関する提言」が公開されています。
その中身を見ると、驚くほど一貫して法人税の引き下げを求めてきたことがわかります。
2000年代:国際競争力を理由に、法人税率の国際比較を強調
2010年代:消費税増税とセットで「法人税減税」を要求
近年:DX投資やグリーン投資に絡めた“減税優遇措置”を要求
そしてその多くが、数年内に実現しているという現実があります。
財務省はなぜ応じるのか? —表と裏の思惑
財務省にも「建前」と「本音」があります。
建前:「企業活動を活性化させ、経済成長を促進し、結果的に税収を確保する」
本音:経団連加盟企業は、財務官僚の天下り先でもある
“応分の便宜”を図ることで、将来的なポストと信頼関係を確保するということもありますし、政治家が動きにくい案件でも、経団連と手を組めば“制度改正”が進めやすいということもあります。
つまり、これは「政策づくり」と「人脈づくり」がセットになった構造なのです。
こうして税制は“国民不在”で決まっていく
表向きのプロセス:国会審議・政党の税調で議論され、民主的に決定される
実際の動き:財務省と経団連が協議→与党税制調査会が了承→国会で追認
ここには、市民の声や生活実感はほとんど反映されません。
しかも、税制は一般には難解で、マスコミも深掘りしないため、「税金の決まり方」そのものに国民の関心が届かない構造になっているのです。
では、どうすればこの構造を変えられるのか?
税制を「専門家の領域」から「主権者の問題」に取り戻す
誰がどんな目的で制度を設計しているか、透明性を求める
政策提言の場に、市民・NPO・中小企業の声が届く仕組みを整える
その第一歩は、「知ること」「疑問を持つこと」です。
財務省と経団連が“当然のように”税制を形作ってきたこの構造は、「常識」ではなく「選択」だったと気づくことが、変革の鍵になります。