生命とは何か？
この問いは古代から多くの哲学者や科学者が向き合ってきた人類共通のテーマです。
現代においては、擬似生命体（ウイルスなど）のような「生物と非生物の中間的存在」、さらには人工知能やプログラムといった新しい情報体の登場によって、ますますこの問いの意味が深まっています。
本記事では、エネルギー・情報構造・目的性の観点から「生命とは何か」を多層モデルで捉え直す試みを行います。
第1層：非生物――存在するだけの静的情報
非生物（石、水、空気など）は、構造やエネルギーを持ってはいますが、それを自ら使って変化することはありません。代謝も成長もなく、存在すること自体が唯一の「目的」です。
これは、たとえて言えば「文章や文字」のようなもの。情報としての意味は持っていても、それが展開されるには外部の読み手が必要です。
❌ 代謝しない
❌ 成長・増殖しない
❌ 目的を持たない（外部から意味づけされる）
第2層：擬似生命体（ウイルスなど）――自己複製する構造情報
擬似生命体（ウイルスなど）は、生物のようにDNAやRNAという遺伝情報を持っていますが、代謝や成長の機能は持ちません。宿主細胞の力を借りてはじめて自己複製が可能になります。
これは「画像」のようなもの。そこには明確な構造と意味がありますが、それ自体が動き出すことはありません。誰かが表示・操作して初めて動きが生まれます。
✅ 自己複製の目的を内在
❌ 自力で実行できない
⚠️ 生物的ふるまいをするが、生物とは言い切れない
第3層：生物――目的を持ち自律的に生きる情報体
生物は、自らエネルギーを取り込み（代謝）、成長し、自己を複製し（増殖）、環境に応じて変化する（進化）ことができます。
さらに、自己保存と繁殖という「内在的な目的」を持ち、それを自律的に実行する能力を備えています。
これは「動画」のようなもの。時間の中で動き、変化し、物語を展開していきます。
✅ エネルギーを使って活動
✅ 自己複製と進化が可能
✅ 目的を持ち、それを自ら実行できる
第4層（補足）：人工知能やプログラム――外部に目的を与えられた情報体
AIやコンピュータプログラムは、高度な処理能力や自己学習機能を備えているものもありますが、基本的には与えられた目標（タスク）に従って動作する存在です。
内発的な目的や自律的な存在意義を持っているわけではありません。
ある意味で、擬似生命体（ウイルスなど）に似た面もありますが、それ以上に外部依存性が強いといえます。
✅ 高度な動作が可能
❌ 自ら目的を持たない
❌ 自力でエネルギー管理や繁殖はできない
多層モデルによる生命の階層的理解
このように、生命を「静的情報 → 構造情報 → 動的情報 → 自律的意志」として捉えると、次のような多層的構図が見えてきます。
結論：生命とは「時間の中で自己を展開する存在」
この多層モデルが示すのは、生命とは単に情報や構造を持つ存在ではなく、
「エネルギーを自ら使い、目的を持ち、時間の中で自己を展開・維持・再生産する動的な情報体」
であるということです。
それはただ存在するだけでも、他者に動かされるだけでもなく、自ら動き続ける「物語を持った存在」なのです。
