日々の生活の中で、私たちはしばしば「不安」や「恐怖」といった感情に襲われることがあります。
たとえば、大事な試験の前や、人前で話さなければならないとき、あるいは高い場所に立ったときなど――。
これらの感情は似ているようで、実は大きな違いがあります。
今回は、「不安」と「恐怖」の違いと共通点について、心理学的な視点からわかりやすく整理してみたいと思います。
不安と恐怖、その最大の違いは「対象の明確さ」
「不安」と「恐怖」は、どちらも心と体に強い影響を与える感情ですが、大きく異なるのは、その対象の明確さです。
不安は、「もしかしたら○○になるかも…」という漠然とした予測に基づく感情です。
一方、恐怖は「今そこにある危険」に対して生じる反応です。たとえば「閉所恐怖症」や「高所恐怖症」といった名前がついていることからもわかるように、恐怖は明確な対象に対して起こります。
共通点:どちらも私たちを守る大切な感情
違いがある一方で、不安と恐怖にはいくつかの共通点もあります。
1. 生き延びるために必要な反応
人間は本能的に、危険を察知し、それに備える能力を持っています。不安も恐怖も、私たちが危機に直面したときに「備える」か「逃げる」かを判断する重要なサインです。
2. 体の反応が似ている
どちらも自律神経を刺激し、心拍数の上昇、呼吸の乱れ、筋肉の緊張、発汗など、体の防衛反応を引き起こします。
3. 過剰になると「障害」となることも
心の反応は本来、私たちを守るためのものですが、それが過度になると日常生活に支障をきたすことがあります。不安が強くなりすぎれば「不安障害」、恐怖が制御できなければ「○○恐怖症」と診断される場合もあります。
曖昧なケースもある
現実には、不安と恐怖が明確に分かれることばかりではありません。たとえば…
「試験前の緊張」は、不安(うまくいかなかったらどうしよう)と恐怖(失敗して恥をかくかもしれない)が混ざっているかもしれません。
「正体のわからない物音にびくっとする」のは、一瞬の恐怖ですが、その後に不安が残ることもあります。
このように、感情は単純な二分ではなく、連続体のように混ざり合って私たちの心に現れます。
感情と上手につきあうために
不安も恐怖も、無理に「消す」必要はありません。
それぞれの感情が持つメッセージを理解し、「今、自分は何を恐れているのか?」「なぜ不安になっているのか?」と問い直してみることが、心を整える第一歩になります。
感情を敵とせず、味方として扱う――
そうすることで、私たちはよりしなやかに、そして落ち着いて日々を過ごすことができるのではないでしょうか。