食品の消費税をゼロにしても価格が8%下がるとは限らない

時事問題
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最近、「せめて食品の消費税だけでもゼロにすべきだ」という意見をよく耳にします。

生活費が高騰している状況では、誰もが賛成したくなる考えです。

しかし、実際の小売店の現場では、食品の消費税をゼロにしても、価格が下がるとは限りません。

その理由は、制度の話ではなく、現場の価格の決まり方にあります。

 

消費税の納税義務者は「消費者」ではなく「事業者」

大前提として、消費税は販売事業者に課税される税金です。法律上、納税義務があるのは消費者ではありません。

「消費者が税金を払っているように見える」のは、事業者が価格に税分を上乗せしていることになっているからです。

しかし、現場ではその上乗せができていないことが非常に多いのです。

 

価格は競争で決まる

たとえば、100円で仕入れた商品があるとします。

理論上は、100円+10円(消費税)=110円で売りたい。しかし、周辺の店が105円で売っていたら、110円では売れません。

そこで小売店は、100円を105円で売ります。つまり、本来の10円の消費税を全額転嫁できず、小売店が消費税の一部を吸収してしまっているということです。

この吸収分が現場の利益を圧迫しています。では、食品の消費税をゼロにしたらどうなるでしょうか?

理屈では、105円→97円になるはずです。

しかし、実際にはこうなりません。理由は、仕入れ値(100円)は変わらないから。100円で仕入れて97円で売ったら赤字です。

そのため、実際の現場で起きるのは、食品の消費税ゼロになっても、価格は105円のまま据え置かれるのです。

価格は「消費税」ではなく市場価格(売れる価格)で決まっているため、消費税が上がっても、小売店が吸収することがあり、消費税が下がっても、小売店は値下げしないことがあるという現象が起きます。

 

小売店が悪いのではなく構造の問題

小売店はわざと値下げしないわけではありません。

薄利多売
激しい価格競争
利益の確保が難しい構造

これらの理由で、消費税がどう変わろうが「売れる価格」でしか売れないのです。

だから、食品の消費税ゼロ=8%値下げではないのです。

 

まとめ―最もシンプルな解決策は消費税廃止

消費税は法的に事業者に課税される税
小売店は消費税を完全には転嫁できていない
食品の消費税がゼロになっても
→仕入れは変わらない
→値下げされない可能性が高い

結果として、食品の消費税ゼロは、必ずしも生活者の負担軽減になりません。

ここまでの問題はすべて、転嫁するかどうか、帳簿で区別するか、価格に織り込むかどうかといった「消費税があること」から発生しています。

だったら、発想を変えればいいのです。食品だけゼロにするのではなく、消費税そのものをなくせばよいのです。

消費税を廃止すれば、軽減税率も不要、食品だけゼロにする線引きも不要、価格も会計もシンプルになり、すべての商品が確実に安くなります。

余計なルールを追加するより、「制度を削除するほうがシンプル」です。

もっとも負担が少なく、もっとも効果が大きい解決策は、消費税一律ゼロ=消費税廃止です。

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