最近、「せめて食品の消費税だけでもゼロにすべきだ」という意見をよく耳にします。
生活費が高騰している状況では、誰もが賛成したくなる考えです。
しかし、実際の小売店の現場では、食品の消費税をゼロにしても、価格が下がるとは限りません。
その理由は、制度の話ではなく、現場の価格の決まり方にあります。
消費税の納税義務者は「消費者」ではなく「事業者」
大前提として、消費税は販売事業者に課税される税金です。法律上、納税義務があるのは消費者ではありません。
「消費者が税金を払っているように見える」のは、事業者が価格に税分を上乗せしていることになっているからです。
しかし、現場ではその上乗せができていないことが非常に多いのです。
価格は競争で決まる
たとえば、100円で仕入れた商品があるとします。
理論上は、100円+10円(消費税)=110円で売りたい。しかし、周辺の店が105円で売っていたら、110円では売れません。
そこで小売店は、100円を105円で売ります。つまり、本来の10円の消費税を全額転嫁できず、小売店が消費税の一部を吸収してしまっているということです。
この吸収分が現場の利益を圧迫しています。では、食品の消費税をゼロにしたらどうなるでしょうか?
理屈では、105円→97円になるはずです。
しかし、実際にはこうなりません。理由は、仕入れ値(100円)は変わらないから。100円で仕入れて97円で売ったら赤字です。
そのため、実際の現場で起きるのは、食品の消費税ゼロになっても、価格は105円のまま据え置かれるのです。
価格は「消費税」ではなく市場価格(売れる価格)で決まっているため、消費税が上がっても、小売店が吸収することがあり、消費税が下がっても、小売店は値下げしないことがあるという現象が起きます。
小売店が悪いのではなく構造の問題
小売店はわざと値下げしないわけではありません。
薄利多売
激しい価格競争
利益の確保が難しい構造
これらの理由で、消費税がどう変わろうが「売れる価格」でしか売れないのです。
だから、食品の消費税ゼロ=8%値下げではないのです。
まとめ―最もシンプルな解決策は消費税廃止
消費税は法的に事業者に課税される税
小売店は消費税を完全には転嫁できていない
食品の消費税がゼロになっても
→仕入れは変わらない
→値下げされない可能性が高い
結果として、食品の消費税ゼロは、必ずしも生活者の負担軽減になりません。
ここまでの問題はすべて、転嫁するかどうか、帳簿で区別するか、価格に織り込むかどうかといった「消費税があること」から発生しています。
だったら、発想を変えればいいのです。食品だけゼロにするのではなく、消費税そのものをなくせばよいのです。
消費税を廃止すれば、軽減税率も不要、食品だけゼロにする線引きも不要、価格も会計もシンプルになり、すべての商品が確実に安くなります。
余計なルールを追加するより、「制度を削除するほうがシンプル」です。
もっとも負担が少なく、もっとも効果が大きい解決策は、消費税一律ゼロ=消費税廃止です。

