「農協は時代遅れだ」「もっと企業に任せるべきだ」
そんな声が日本国内ではしばしば聞かれますが、果たしてそれは本当でしょうか?
実は今、国際的には協同組合が再評価されている時代に入っています。
とくに農業分野では、小規模農家の自立や持続可能な生産を支える仕組みとして、協同組合モデルが高く評価されているのです。
最終回となる今回は、世界の中で見た「農協」の意義と、日本の未来にとって協同組合がなぜ必要なのかを考えていきます。
FAOやOECDも注目する「協同組合モデル」
国連の専門機関であるFAO(食糧農業機関)は、長年にわたって農業協同組合を小規模農家支援の要と位置づけてきました。
また、OECD(経済協力開発機構)も、加盟国に対して協同組合による持続可能な農業支援の重要性を提言しています。
理由は明快です。
個々の農家では成り立たない資材調達・技術支援・販売網の確保を、協同組合が公共性と公平性をもって担えるからです。
多様な農業と「包摂的成長」を支える仕組み
近年、世界各国で進む「農業の大規模化」は、効率の裏側で小規模農家の排除と格差拡大という深刻な問題も招いています。
こうした中、農協は、小規模・高齢・非効率とされる農家も含めて支援する“包摂的(inclusive)”な仕組みとして注目されています。
つまり、単に競争に勝てる農家だけを生き残らせるのではなく、多様な農業の形を認め、地域ごとの事情に応じて支える仕組みこそが、農協なのです。
日本の農協は「世界でも珍しい成功例」
日本の農協は、全国に広がる組織網と、経済・金融・生活支援が一体化した総合的な協同組合として、世界でも類を見ない存在です。
実際、東南アジアやアフリカの農業支援プロジェクトでは、日本のJAモデルが参考にされるケースもあります。
それほど、実績と持続性、信頼性を兼ね備えた協同体制だということです。
私たちが“時代遅れ”と思い込んでいる農協は、実はグローバルな農業支援の先進モデルなのです。
市場原理だけでは社会は守れない
市場原理は、効率を追求する点では優れていますが、公平性や持続可能性、地域文化の維持には不向きです。
営利企業は利益が出ないと判断すれば、平然と撤退します。行政サービスも縮小傾向にある中、利益を超えて地域を支えてきたのが協同組合です。
だからこそ今、農協のような組織が単なる「農業団体」ではなく、「地域社会の共助モデル」として再評価されているのです。
結論:未来をつくる協同の力
協同組合は、「古い制度」ではありません。むしろ、資本の論理が暴走する時代において、人間らしい暮らしと地域社会を守るための“新しい知恵”です。
農業に限らず、金融・介護・エネルギー・子育てなど、あらゆる分野で協同の仕組みは活用できます。
その可能性を信じ、育てていくことこそが、これからの持続可能な日本社会にとって欠かせない選択肢なのではないでしょうか。