「財源がない」は本当なのか?
テレビや新聞では繰り返されます。
「社会保障のために増税が必要」
「借金が増えすぎて将来世代にツケが残る」
その一方で、こうした声も聞かれます。
「日銀が国債を買い続けているのに、なぜ財政破綻しないのか?」
「コロナで100兆円以上の予算を出せたのに、なぜ普段は出せないのか?」
こうした疑問の核心にあるのが、「積極財政」という考え方です。
本記事では、「本当に増税しなくても国は回るのか?」というテーマに正面から向き合います。
「増税=健全財政」のウソとホント
日本では、増税こそが「財政健全化」だという前提が共有されています。
しかし、実際にはこの論理には次のような前提が隠れています。
「国の財政は家計と同じ」という誤解
「プライマリーバランス(PB)黒字化が最優先」という方針
「借金=悪」であり、支出を絞るべきという思想
しかし、国の経済は家計とはまったく違います。
国家には、通貨発行権と信用創造の仕組みがあり、支出そのものが経済の原動力になります。
積極財政とは何か?
積極財政とは、次のような考えに基づいています:
政府支出は国民の所得である
→公共事業・福祉・雇用創出は経済に直接的な需要を生む
税は財源ではなく、インフレや格差調整の“調整弁”
→先にお金を出して、あとで回収・調整する機能
不況期に支出を増やし、好況時に調整すべき(ケインズ的政策)
→緊縮は逆効果、景気悪化を助長するだけ
この考え方の背景には、現代貨幣理論(MMT)なども含まれています。
「国の借金」はなぜ破綻しないのか?
日本の政府債務残高は約1,000兆円以上。しかし、なぜ破綻しないのでしょうか?
その9割以上は国内で保有されている(国債の持ち主は日本人)
日銀が大量に国債を買い入れており、実質的な金利はゼロに近い
自国通貨建ての国債であるため、返済不能に陥ることがない
日本政府は“借金を返す”というより、“通貨を循環させている”に近い構造です。
増税よりも先にすべきこと
積極財政を本格化する前に、次のような改革が求められます:
歳出の質の見直し
–補助金のバラマキや天下り関連支出を再点検
–公共投資を「人への投資」にシフト(教育・子育て・医療)
国債発行の戦略的活用
–インフラ更新、脱炭素、AI研究など未来志向の支出に限定
–将来の“資産形成”に寄与する支出は健全
通貨発行とインフレ管理の分離
–「お金を刷ればよい」という単純発想ではなく、インフレ率と経済需要を見ながら調整
海外の事例:積極財政は実は“普通の選択”
アメリカはコロナ禍で約3兆ドル(400兆円以上)の財政出動
イギリスも「新しい財政のルール」を模索し、借金を成長投資に活用
EU諸国でも「脱炭素」「DX」などの公共投資を拡大中
財政支出=成長戦略という視点が、むしろ主流になりつつあります。
市民が果たすべき役割とは?
積極財政が必要だとしても、それを選ぶのは政治の意思=主権者の選択です。
選挙で“緊縮か積極か”を問う候補を選ぶ
政策の数字と論理をきちんと学び、広める
財政黒字化が目的化している議論の「前提」を疑う